遺言

若い女性に拳銃を握らせるという『遺言』の発想は気に入った。複数の人物をおさめる二、三の画面をのぞいて室内ショットもほぼ完璧だし、戸外の光景も申し分なく撮れており、大胆な溶暗による語りも聡明である。ただ、引き金を引くか引かぬかがもっぱら女の「心の問題」でしかないところが、惜しまれてならない。それにしても、人物、もしくは生きた死者を横たわらせる構図はむつかしい。─ 蓮實重彦(映画評論家)

ゾンビでも、愛してる

ゾンビ化してしまった夫を殺せず、介護を続ける妻、京子。夫を殺すべきか葛藤する中、京子は夫が生前に遺した遺言を目撃する…
京子は、自警団に所属する男、佐藤に誘われ、ゾンビの処刑場へと足を運ぶ。
そこで京子は、夫と同じ人間が射殺される光景を目撃する。夫を守ると誓う京子だが、同じくゾンビ化した夫を射殺しようとする佐藤と銃口を向け合う。
自分にもゾンビ化した妹がいると告げる佐藤。京子達は、妹のもとへ向かう。

【作品解説】
ゾンビ世界の終焉を描く今作の評価は高く、国内のみならずドイツやイギリスの映画祭でも上映された。主演の夫婦を演じる二人は、「FINAL FANTASY XIII」のライトニングとスノウのモーションアクターを演じた、中島菜穂と小幡誠。
主人公に対峙する男、小柳基は「HERO」や「日曜劇場 親父の背中」などに出演しており鋭い眼光で作品に緊張感を生んでいる。
本作の監督は、Vシネ「トカレフ2010 運命の撃鉄」を監督した木部公亮。
27歳の新進監督が日本映画の新たな表現を追求した、必見の作品である。

Cast

中島菜穂  Naho Nakashima
石川県生まれ。2003年ワコールCM「感じるブラ」でデビュー。
ドラマデビュー作のTV朝日「刑事部屋」ではゲスト出演し性同一性障害の役を好演。ドラマ「アキハバラ@DEEP」にも出演。
スクウェア・エニックス「FINAL FANTASY XIII」「FINAL FANTASY XIII-2」「LIGHTNING RETURNS」シリーズ3部作にて主人公ライトニング役のモーションキャプチャーを担当するなど幅広く活動。
小幡 誠  Makoto Obata
1981年生まれ。
テレビドラマ「ROOKIES」、「S -最後の警官-」などに出演。
スクウェア・エニックス「FINAL FANTASY XIII」「FINAL FANTASY XIII-2」のスノウ役のモーションアクターを担当。
白石直也 Naoya Shiraishi
1981年埼玉県生まれ。文学座附属演劇研究所卒。
テレビドラマ「リバースエッジ大川端探偵社」、「判事マツケン〜一刀両断!?天才たちの”破天荒人生”〜」出演。
小柳 基  Motoi Koyanagi
1960年北海道生まれ。桐朋学園芸術短期大学演劇専攻中退。
劇団「天井桟敷」出身。テレビドラマ「HERO」、「日曜劇場 親父の背中」出演。
アニメ「SHIROBAKO」の吹き替え担当。
  • 神社勝之  Katsuyuki Kanjya
  • アラリン  ararin
  • 遺伝子雑太郎  Zatsutaro Idenshi
  • 新川美咲  Misaki Arakawa
  • 金子一夫  Kazuo Kaneko
  • 西田宣善  Nobuyoshi Nishida

Staff

プロデューサー&脚本&監督:木部公亮  Kosuke Kibe
1987年東京都生まれ。
東京フィルムセンター映画・俳優専門学校卒。
2010年 22歳でVシネマ「トカレフ2010 運命の撃鉄」を初監督。全国のDVDレンタル、衛星放送、Amazonインスタント・ビデオにて販売・配信中。
2011年 短編映画「自白」で第二回伊勢崎映画祭入選。
2012年 短編映画「遺言」はJapan-Filmfest Hamburg 2013(ドイツ)、Bram Stoker International Film Festival 2014(イギリス)入選。

脚本:澄田尚幸、木部公亮 │ 撮影:マグナス・トルス │ 録音:黒岩理人
美術:門脇萌 │ 音楽:寄崎諒 │ MA:キルマー・ディア
VFX:鈴木良高、鳥家大悟
メイク:平河理桜、俵あずさ、森田優奈 │ 衣装:山本りさ
配給:オムロ
2012/日本/カラー/デジタル/32分

Review

Bram StokerInternationalFilm Festival 2014レビュー
[和訳]

ゾンビ映画によく登場する、悲しみを伴う残酷な抹殺シーン—それは今や、人肉を食べよろめく死霊と化した、愛する人々—その思い出や関係を捨て去ることであり、生と死を分かつ重大な一歩となる。檻に閉じ込められた愛娘の父親を演じた「ウォーキング・デッド」のガバナーや、ロッターズを社会に迎え入れることの心理的な影響を描いた英国ドラマの「イン・ザ・フレッシュ」まで、”解放”は”死”に関連した強力なテーマとして存在する。木部公亮の情緒的な短編作品「遺言」(2012年)は、ゾンビ達が町はずれで銃殺部隊により処刑されるという文脈においてこのテーマに取り組んでいる。(中略)この映画は、戦時中に起こり得る潜在的暴虐性をもった行為や、感情を再現する以上のものであると解釈することは大変価値があり、そのメッセージ性や論調の双方においてシリアスで印象的なゾンビ短編として評価できる。全てがこの木部公亮監督による印象的な小さな映画の中に詰め込まれており、もしゾンビ映画を緊迫感があり親しみやすく、キャラクター中心のものと捉えるならば、ゾンビの形態はまだその発展途上にあることを証明している。このことは、ワールドウォーZから明らかに採用された流れである。

flickfeastより 抜粋:By Chris Binding)

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